散歩
夜10時。晩飯が腹にもたれている感覚がして、外に散歩に出た。

北10の西4近辺にある実家から西5丁目通りを南下。ネカフェを探しつつ深夜の散策と洒落こむ。

久し振りに帰ってきた札幌に何処か違和感を感じつつ、ブラブラと宛てもなく歩いてゆく。

金曜の夜ともあって、サラリーマンやOL達がそこらじゅうで、仕事の話に花を咲かせつつ歩いていた。

しかし新宿や渋谷の様な人混みではなく、副都心にある独特の空気。人はいるのだが混んでいるとまでは行かない、一固まりの集団が各2m程度は離れて道を歩いている。

すすきのに近付くにつれ大学生などの若い集団が増えていく。


ああ、やっぱり馴染むなぁ。この空気。

などと思いながらそのまま進んで行くと、狸小路のアーケードが目に着いた。

ふと、ネカフェを探しに来たことを思いだし、横に曲がる。

と、空気が違っていた。

高校生や中学生ぐらいかと思われる少年少女達が群れて楽しそうにはしゃいでいるのだ。アーケードのガラスを鏡がわりにダンスの練習をしている者達や、壁を背にして地面に座り込みギターを弾きながら歌う者達。そして同じく座り込みそれを見ている者達。

地元だからと言う贔屓目も有るのかもしれないが

不快な感じがしないのだ。
確に場違いな気はするが、東京の糞鬱陶しい人混みと違い、各自寄り集まってはいるのだが3〜4人ずつといった感じか。

それでも東京の若者が放つ、オーラと言うかエネルギーに比べると健全な感じがする。
女子の化粧もナナ風ではあるがかなり薄口で、男子の髪もホスト風では有るものの全体的にキマリきっていない。

これが田舎臭さと言うヤツなのかも知れない。
髪や化粧で似せたところで、服装までは完全に東京のアレらと同じモノにはなれない。

なんせ氷点下である。

暑がりな私でさえシャツにフリース、上からさらに冬用のウィンドブレーカーを着ている。
下はジーンズだけであるが、既に皮膚表面の温度感覚は無い。
立ち止まると上半身からも熱が奪われてゆく感覚がする。

ファッション性より耐寒性。皆、着膨れして字のごとく上半身が膨らんでいる。
そんな中でも彼等彼女等は元気にわいわいと叫んでいる。

これを元気と言わずに何と言おうか。

そこにはやはり健全なオーラが漂っている様な気がしてならない。

気まずさは有っても不快感は無い。どれだけ人数がいても田舎臭さと健全さがかいまみえるあたり、東京の毒を体感した後では大したことはない。

そのまま狸小路を通り抜け、北は家に帰るべく進路を取った。
西2の通りを北上すると、テレビ塔の足元に出る。
大通りを渡りHTVを見上げると、現在の温度は-1,4°C。

流石は暖冬。2月にしては暖かい。

寒気が流れたから暖かくなったのかもしれないが-5°Cくらいになると、今の装備では太股全体が霜焼になるくらいは覚悟しなければならない。

それにしても、あのタイルに座り込んでいたギターの若者達は良く耐えられるものだ。

やはりアイツら元気あるわ。



バス停の近くで柵に腰掛けつつ一服つける。

見上げると、街灯の灯りが雲に反射して空が橙色に染まっていた。

東京の夜空はネオンで毒毒しい紫の空だったが、札幌の夜空は橙。

星空に比べれば毒かもしれないが、冬の寒空に暖色の橙なんて言うのは子供の時から成れ親しんだだけあってしっくりくる。

かえってその寒さを引き立てる様な気さえしてくる。

煙草を呑み終えて柵から腰を挙げる。
ぼーっと考えていたせいで尻が完全に冷えきってしまっていた。

テレビ塔を見上げると時刻は11時を回ったところ。周囲を見渡すと、居酒屋などのある場所から少し外れているだけに、自分以外では工事現場のおっちゃん達しかおらず、ビルの電気も消えているので一層閑散としていた。

そこでようやく初めの違和感の正体に気が付いた。

札幌を出て東京に行く前は、要するにコレが普通だったわけだ。
疑問も持たず、自分の中ではこれが一番の都会だった。
それが東京に出たおかげで更に都会に慣れ、そのせいで今まで感じていたモノと違った視点に見える。

詰まるところ、私が変わったって事か。

そう気が付くと何だかスッキリした。

閑散とした夜の札幌を独り、久し振りに帰ってきた故郷の空気がやはり肌に合うのを感じつつ、家に帰った。








結局、ネカフェは見付からなかった。

ついでに言うと、家まで残り500mと言うところで急に便意を催し、危うく色々と×××かけた。

きっちり食後の運動になったみたいね(笑)

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