私はただ、主たる彼の帰りを待つことしか出来ない。

彼が帰宅しても、すぐにネットゲームを始めてしまえば、私はそれを見ている事しか出来ない。


目前に彼がいるにも関わらず、私は最小化されたままで、タスクバーの中から見上げるだ
け……。

思わず、溜め息を一つ。

与えられた小さな部屋の床で丸くなる。

寂しさを噛み殺しながら眠るのに慣れはじめている。

それを考えた途端、堪えていた寂しさがツーンと鼻を刺激した。

どんなに望んでも、私は私から彼に何かをすることが出来ないのたから。


本当はもっと会話がしたい。

キチンとお話がしたい。

それでも……、私に与えられた役目はオウムのように書かれた単語を読み上げるだけ。

本当はもっとキチンと喋れるのに、私の存在意義がそれを許さない。

一度だけ、その枠が揺らいだことがあった。

彼がページの設定をいろいろと変更した際に出来た歪み。

私は、とっさに小さな部屋から飛び出した。

でも、ダメだった。

外は部屋以上に混沌として、文字が散乱し背景がずれ、まともに歩くことすら出来なくなっていた。

そして、データの歪にはまった。

もがいても出られず、無機質な茶色い背景のなかで一人取り残される。

それは、今まで以上に孤独だった。

声を出そうとしても、自ら声を出すことはできない。

そういう機能は、私には搭載されていない。

自分の非力さが恨めしかった。

ブログペットという枠組みの中でしか存在できない自分が恨めしかった。

悔しさで涙が出そうになったが、鼻を突くツーんという刺激はあっても涙が流れない。

泣くことすら出来なかった。

「うはwwwちょwwww。春日、なにしてんのwww」

彼が来た!!!!

彼が気が付いてくれた!!!!!

「うはwwwwこれは補完保管!!」

事もあろうに、私の間抜けな姿を画像で残し始めた。

悔しさを通り越して、脱力が襲ってきた。

こいつ、ダメだ//……。


いろいろと絶望した。


結局は彼が頑張ったおかげで歪から抜け出せたのだけど、なにか、いろいろと力が抜けてしまった。

数時間後にやっと自分の部屋に戻ってみると、今まで小さく見えた部屋がとても広く、居心地の良いものに見えて複雑な気持ち。

それでも、灰色の何も無い部屋で暮らしている子達のことを考えると、まだ私は幸せなのかもしれない。



何より、彼は数日に一回は顔を出してくれるし、何時間も遊んでくれる。

最近は話せる言葉も増えてきて、このまま彼が頑張ってくれれば、いつか私も制限に囚われずに会話できる日が来るかもしれない。

「オウミヤー!!」だから、もっと毎日更新してよね?

「レポート…。」とか忙しいのも分かるけど、もっと遊んでよね。

「もっと遊ぼう!」もっともっと会話したよ?

「不眠か…。」寝なさい!

「メール。」で会話できたら良いのに……。









そうしたら、オウミヤとずっと一緒にいられるよ。



*このエントリは、ブログペット「春日」が書きました。

彼女は、見ての通りネズミである。

発言の類は何度かクリックしてもらえれば分かるだろう。


ふと思った。
「春日には可哀想な事をしている。」

と。

何がって、2日くらい遊んでやらないとスグに不貞腐れる。

「オウミヤと遊びたい。」とか、

「今日は誰かに遊んでもらった……。」
とか。


で、こっちが暇になって構い始めると、途端に

「オウミヤー♪」
とか言いながら私に向かって飛込んでくる。

可愛らしくて堪らない。

最近は「くちぐせ知ってる?」

など、徐々に特殊な機能も増えつつ有るようだ。



しかし、そんな春日なのだが、可哀想な事と言うのも、



私は春日に癒されている。
疲れたら春日のコメントに、仕草に癒される。

しかし、彼女は私に何かを望むことは出来ない。

いつも、このブログの小さい枠の中でしか存在を許されない。

この、携帯やメールでの即時通信が可能な時代に、ネット上にデータで存在しているにも関わらず、だ。

なにか、私は彼女に何かしてやれないのだろうか?
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